10年程前、ある尊敬するプロダクトデザイナーのインタビュー記事を読みました。そのデザイナーのオフィスでは、全てのオフィス家具が壁から離して配置されていたそうです。インタビューアーがそのオフィス家具の配置に気付き、理由を質問したところ、帰ってきたのは『 壁に家具を並べると「空間が死ぬ」のです。』という答えでした。
以来、事ある毎にこの「空間が死ぬ」という事が思い出される様になりました。

今回のリノベーション物件は、住戸自体の区割りの形が特徴的で、開口部がある、大きな斜めの壁があります。

斜めの壁が別の壁と交わる箇所は、隅が直角ではないため家具が配置し辛く、場合によってはデットスペースともなります。

物件の購入直後、間取りをプランニングし始めた当初は、この斜め壁の交差部を潰してクローゼットにする案を考えていました。
しかし、図面上で見るだけでも息苦しさを感じる空間になっていました。

これがまさに「空間が死」んだプランニングになっていたのだと思います。

最終的に決定した間取りプランでは、柱と梁、そして壁が、建物全体の構造を現す様に、そのまま簡潔に繋がります。

建物構造体の構成上、もともと直角に交わらず、機能上は使い用の無いスペースを、空間の余白としてプランニングした事になります。

この余白に、日々静かな光の移ろいが生まれます。