アーロンとの出会い

学生が終わり、社会人となって勤務を始めた東京。隣にはシェアオフィスとしてデスクを使っているデザイナーの大先輩がいました。
ふとした小物の並べ方一つとっても凄まじいセンスを感じさせる、当時の僕にとっては理解の及ばない、どこか謎めいた存在。
そんな先輩デザイナーが座っていたのが、「ハーマンミラー アーロンチェア」。

https://www.hermanmiller.com/ja_jp/products/seating/office-chairs/aeron-chairs/より

___一度でも座れば、忘れられない座り心地

実際に座らせてもらうと、自分の身体に合わせて設計されているのではないかと思えるくらいのフィット感

そしてアーロンの最大の特徴と言えるのが、背もたれの反発です。始めは柔らかく、深く傾ける程強くなる反発。背もたれに使われるメッシュ材の反発と調和しながら、心地よく身体全体を支えてくれます。

ふと背中を持たせ掛けた時のしなやかな反発。ただ、だらしなく座っていても、様になってしまうフォルム。プロダクトとしての、その凛とした佇まいに、完全に圧倒されました。

やがて、その時が

10年前、ぼくにはどうしても取得しなければならない資格がありました。既に1年以上、勉強を続けていましたが結果は出ない。少しずつモチベーションが落ちて行くのを感じながら、時間ばかりが過ぎて行き、焦る気持ちが強くなる。
ここで、思い出さない訳がありません。探します、ヤフオクで。


___「自分の」アーロン

多分、40,000ちょうどだったと思います。外資系企業のオフィス移転に伴い、他のオフィス家具と一緒に10脚ほどのアーロンが割安でオークションされていました。デスクチェアに40,000、相当な買い物です。しかし、迷う余地なく落札。一週間後、大きな段ボールに梱包されたアーロンが届きます。

その後なんとか資格を取得し、責務を果たしたアーロン。それからはほぼ完全にラウンジチェアーとして、ソファ替わりに毎日使い続ける事になりました。

その機能性が
どんなシーンにもフィットする

デスクチェアーとしてはやや大型と言えるアーロンですが、ラウンジチェアーとしてはジャストサイズ。キャスターが付いているため細かな移動は全く苦にならない回転機能によって、視線や身体の向きに依らず、背もたれが常にフィット。ガス圧式の座面の上下は、いたって簡単

この機能性、都心のコンパクトな間取りに最適でした。デスクワークに使えて、くるっと向きを変え、座面を下げれば雑誌を眺めるラウンジチェアーにもなってしまう。

柔軟にあらゆる状態で、身体の動きに追従してくれる。ソファ替わりに一度使ってみてから、他の選択肢は一切なくなりました。

10年間、これから先も
毎日使い続けるもの

10年間毎日使っていても全く不具合もなく、修理した事は皆無。ダメージらしいダメージはまるで無く、強いて言えば、座面裏側の端部に使われているスポンジ状のパーツが少し取れてきますが、機能性には一切関係ありません。

これだけ使っていると、本当に身体の一部の様に、全く意識せずに身体を預けています。
朝少し早く起きて、コーヒーを飲みながら外を眺めるとき、休日まったりDVDを見るとき、夜食事をするとき、だらだらハイボールを飲んでいるとき。

全て、この背もたれのしなやかな反発を感じています。
この先、何十年、背中を預ける事になるのか。心強いしなやかな反発と日々が続いて行きます。